繕いの器、今回は私が普段使っている漆の汁椀の記録になります。
これはいわゆる合鹿(ごうろく)椀と言われるもので高台が高くサイズも大振りな仁城義勝さんの作。味噌汁はたっぷり飲みたい自分には丁度良く10年来愛用してきたものだが長年の使用で光沢は失せ内側には漆が剥げて所々に素地が見える箇所が。
一般的にはそろそろ買い替えの時期という事になるのかもしれないがせっかく漆芸家の先生に陶器の繕いでご縁があるので相談してみたところ繕えるというので自分でやってみた。
先生によるとこの椀は元々溜塗(とめぬり:漆を刷毛で一度に厚く塗り、それを数回重ねて完成)だがそれには専門的な道具も設備も必要だという事で代わりに比較的手軽にできる拭き漆という方法で漆を重ねていく事に。
初めに細かい耐水ペーパーでダメージの大きな内側を中心に器全体を研ぎ出した後、漆を含ませた布で全体を拭く様に漆を刷り込ませる。この工程を繰り返す事で見違える様に椀表面の光沢が戻ってきた。
左:繕う前 右:拭き漆で繕った後
※同じ椀を2個持っているので並べて撮影
自前のメンテナンスでまだまだ使える事が分かってとても嬉しい経験となった。いいものは長く使いたい、長く使う事で自分の体に染みつく感覚があるから。
工業デザイナー故秋岡芳夫氏の「消費者をやめて愛用者になろう」という言葉が好きです。
T POTTERY 陶芸工房では当工房が制作・販売した器で使っているうちに欠けたりひびが入ってしまったものをお預かりし、漆による繕いを行っています。
詳しくは当HP「繕いの日」をご覧ください。